SPG AMEXカードはSPG、 マリオットにとって救世主か?

AMEXカードの中でも近年 爆発的な人気なのが スターウッドプリファーゲスト アメリカンエキスプレスカード(SPG AMEX)です。その他提携カードはおろかプロパーカードでさえ人気においては及ばなくなった ベストセラーカードの1つに登り詰めました。

このカードを所持する事によって恩恵を受けた方々は沢山いると思いますし、ホテル側も顧客の増大で実際は笑いが止まらないと思いきや、実のところ大変な副作用が起きている事をご存知方はまだ少ないと思います。
勿論 提携カード発行先のSPGも全世界規模で会員が増えて 売り上げも増えました。
しかし2016年にマリオットグループによる買収が成立してからは事情が大きく変わり始めました。
SPGもマリオットグループの一員にはなりましたが、運営や会員プログラムについては別々に存在する事となりました。(勿論 暫定的に数年間の猶予の後に完全統合の実施) この中途半端なスタートが後々マリオットの首を絞める大きな理由になってしまったのは非常に皮肉な事だと思います。

マリオットは今日に至るまで世界中の(中堅クラス)ホテルチェーンを買収しながら成長して来ましたし、SPGもほぼ同じような経路で成長してきたホテルグループです。
マリオットはSPG以外の買収は殆どが大が少を呑み込む形で全て マリオットの方針で統一化した組織にして来たのですが、SPG買収に至っては今までの買収とは全く別次元の合併劇となったのです。
例えば大が小を呑み込むのではなく 大が大を何とか抱え込む(時にはかなりの無理を生じて)今迄は起こり得なかった問題も発生している状況になっているのです。
マリオットの世界戦略はヒルトンを抜いて世界トップのホテルチェーンにする はっきりとした目標で進んで来ました。実際にSPGを買収する前にヒルトンを抜いて世界一になり、SPGを買収して断トツな巨大ホテルチェーンへと成長しました。

マリオットの世界戦略の根幹は他のホテルチェーンの会員をマリオットの会員にしてしまう(奪い取ってしまうが正解か?)方針を全面に出して展開して来たのです。
例えば上級会員の特典を他のホテルチェーンより優遇する マリオットリワードは完全にライバル達をターゲットにした戦略なのです。
ヒルトンでは上級会員のうちゴールドはルームのアップグレードと朝食等の無料サービスがあります。この特典でもマリオット以外のホテルチェーンでは殆どない特典でIHG,シャングリラ、カールソン、リージェンシーなどは敵わない特典だったのです。又 早くに提携クレジットカードの発行により上級会員資格を特典して付帯するサービスを展開して世界トップを長年に渡り維持して来ました。

しかしマリオットは最上級ではないナンバー2ランクのゴールド会員に他のホテルチェーンでは最上級の会員にしか付帯しない特典を付けて会員の争奪戦を有利に進めて来ました。
これだけでも他のホテルチェーンがマリオットに対して畏怖する事となったのですが、次に買収したSPGはマリオット程 会員の特典サービスは及ばないしろ AMEXを後ろ楯とした提携カードを発行して所持するだけで上級会員を保証する 翔んでもないホテルチェーンだったのです。
マリオットの提携カードは北米地区だけの限定発行で世界規模では発行して来ませんでしたが、SPGはAMEXと提携して北米、カナダ、イギリス、日本等の優良顧客の獲得に有利な地域で発行している優等生カードを持っていたのです。
これは戦略的にも充分ヒルトンに対抗できる提携カードだったので 買収の際に会員獲得の有効な手段に使えると判断しました。
ヒルトンは米国本国ではAMEXと提携カードを発行して、日本では三井住友カードと提携カードを発行して共に上級会員資格を特典に広く展開していますが、マリオットはカード会社としては大きくて全米ナンバーワンのJPモルガン銀行の提携カードを発行して来ましたが、AMEXのように全世界規模での発行はなく、日本等の有力なアジア地区は全くてが出せない状況でしたし、日本等は有力な提携カード発行先の三井住友カードは既にヒルトンにがっちり押さえられいる状況では今さら 2番手甘んじる訳には行かないジレンマがあったのです。

突然のビジネスチャンスにマリオットはランク的には格下のSPGの上級会員を双方のプログラムのリンクによるマリオットリワードのゴールドエリートにステータスマッチさせて同等に扱う事を決定して実施したのです。

SPGの会員プログラムとリンクする事は当然AMEXとも深い関係になる事を意味するのでありました。
マリオットリワードとリンクされたSPG会員はSPG AMEXのみならず、AMEXのプロパープラチナカード会員も一緒に抱き込む事になるのです。

マリオットの苦悩、苦難の始まりが正にこの時始まったのです。

この続きpart2として後日 ご紹介します。